愛知東邦大学

AICHI TOHO UNIVERSITYTOHO Stories

教員紹介(人間健康学部)

心のサポートを睡眠の研究で。

学び2023.11.06

人間健康学部 人間健康学科

吉村 道孝

人間健康学部に在籍する吉村道孝先生は「睡眠」の研究をされています。
睡眠の研究に着手された理由や睡眠と健康の関係性、本学で心理学を学ぶ学生についてお話くださいました。
ぜひご覧ください。

専門の研究分野について

―まずは先生の専門分野を教えていただけますか?
私の専門は臨床心理学です。その中でも睡眠を研究しています。なぜ睡眠を研究しているのかと言いますと、人々の睡眠を改善したいというよりも、精神疾患や精神障害をお持ちの方の回復や治療に貢献したいというのが大前提です。精神疾患をお持ちの方は、高い割合で眠れない・起きられないといった睡眠の問題を抱えておられます。なので、睡眠にフォーカスしようと思いました。

―先生はその分野の研究者として活躍していらっしゃるのですね。
僕はその中でもかなり狭い領域で「睡眠と光」の関係を研究しています。例えば、睡眠の中でも体内時計と言われるものがあるのですが、その体内時計が前後するのに最も強い影響を及ぼすのが光りなんです。僕の研究ではどのタイミングでどういう成分の光を照射すれば、体内時計が前に動くか後ろに動くかということを研究しています。

―光による体内時計のズレは、どのようなものが考えられているのでしょうか?
我々は目の網膜で光を受け取り、物を見ることができます。網膜には明暗を感じる桿体(かんたい)細胞と、色を感じる錐体(すいたい)細胞があります。これに加えて最近になって、第三の光受容器として内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGCs)というものが発見されました。このipRGCsが敏感に反応する光成分は、短波長の光であり、いわゆるブルーライトの波長帯域になります。そして、ipRGCsの機能をよく調べてみると、体内時計の調整に大きな役割を担っていることがわかりました。

―ブルーライト。よく耳にしますね。
ブルーライトを多く含んでいる光は何かというと、最近のLEDや液晶ディスプレイなどです。なので、寝る直前にブルーライトを浴びている人というのは、体内時計が後ろになりやすい、要するに夜眠れずに朝も眠たい状況が続いているということが我々の調査で判明しました。

―興味深いですね。ズレた体内時計はどのように戻すのですか?
例えば、学校であれば、朝に起床して登校し、夕方に帰宅して夜に寝る、という一日の体内時計になりますが、朝起きられない方が一定数います。その方たちは夜眠れないため朝起きるのも遅れてしまい、学校の時間とはズレてしまいます。そういう方たちの支援の一つとして、朝に強い光を浴びる「光療法」という治療法で、ズレた体内時計を修正するということが行われます。ただ、朝起きて強い光を長時間浴びるのって、非常に苦痛ですよね。なので、より負担が少なく効果的な光照射の方法はないのかということを研究しています。

詳しくはこちら
人間健康学部に在籍する先生方

睡眠は健康の要

―睡眠はやはり十分にとるべきなのでしょうか?
健康や日々のパフォーマンスを十分に発揮したいのであれば早く寝なさいということを言っています。睡眠時間は個人差がありますが、中高生で推奨される睡眠時間は8~10時間です。日本では、この睡眠時間を取れていない中高生が多いことが心配されています。もちろん大人もですが。睡眠時間が短いと、疲労の回復が十分おこなわれないためスポーツの成績が下がることが明らかになっています。また記憶の整理なども睡眠中におこなわれるため、睡眠不足は記憶力や集中力の低下を招き、学業成績が落ちることもたくさんの研究で証明されています。もちろん、気分やメンタルの状態にも強く影響します。結論から言うと十分に寝た方がいい。

―実際パフォーマンスや記憶的には寝た方が良いのでしょうか?
絶対良いです。遥かに良いですよ。
寝不足のときに会議に出ても何も覚えていないでしょ?笑

―ノーコメントでお願いします!
中高生より大人の方が深刻です。日本人の悪いところで、眠たいときに頑張って参加すると、頑張った気になるんですよ。「よっしゃ!しっかり参加したぞ」って。でも実際は眠気に負けてほとんど覚えていないことが多いんですね。眠たくてぼーっとしていたら頭に何も入っていないので、睡眠寝不足は本当に機会損失ですよ。睡眠寝不足は集中力と記憶力が一気に下がります。もちろんモチベーションも下がりますし、多分自分たちが思っている以上に睡眠寝不足は悪いです。例えばそれが長期間続くと、生活習慣病や癌、認知症のリスクなども、上がります。睡眠は本当に健康の要です。

―心理的にもよくないですか?
睡眠不足が続くと、鬱になりやすい、喧嘩しやすい、イライラしやすい、体の健康指標も一気に下がるなど、本当に良いことないですよ。ちなみにお布団に入って何分で寝ます?布団に入って寝付くまで。

―早いときは2分で寝るときもあります。
それは睡眠不足の状態ですね。お布団に入って、いわゆる「バタンキュー」ですぐに寝る人は、睡眠不足の状態と考えることができます。反対に、お布団に入って寝付くまでに30分以上かかるようだったら不眠の可能性があります。お布団に入って10分前後で寝られるのがいい睡眠習慣と言われています。

―十分な睡眠が取れているというのはどのようにわかるのでしょうか?
本やテレビ等で7時間半から8時間は寝なさいと耳にしたことがあると思います。でも本当は十分な睡眠時間というものには個人差があります。私達研究者がどのようにその人に合った睡眠時間を算出するかというと、一番わかりやすいのが、睡眠自体ではなく日中のパフォーマンスをみることです。起床時に、「起きづらい」「すっきりしない」「疲れがとれていない」というのはもちろんのこと、日中に耐えがたい眠気や、ちょっとした時間に居眠りをしてしまうのは睡眠時間が足りていないことになります。睡眠時間や睡眠の質ということにこだわるよりも、日中の眠気や注意力、気分について注意することが大切です。そして睡眠というのは習慣ですので、たった一晩の睡眠の評価よりも、数週間や数か月単位で、きちんと十分な睡眠習慣が送れているかが大切です。

―なるほど。とても勉強になりました。

詳しくはこちら
教員紹介(論文等)

心理学を学ぶ学生へ

―本学ではどのような授業を担当されていますか?
公認心理師カリキュラムに関連する授業を主に担当しています。
今の担当科目は健康医療心理学や心理学的支援法、心理的アセスメントなどです。

―授業で大切にしていることはありますか?
授業では出来るだけ学生がイメージしやすいようにということを心がけています。
心理学の内容は文字を読むだけでは、なかなか理解できないんですよね。なので、動画を見せたり、私の現場での経験談を話したりすることを大事にしています。あとは受講している学生に問うなどインタラクティブな関わりも大事にしています。

―具体的な体験を聞くと理解も深まりますね。公認心理師のカリキュラムはインプットが中心なのですか?
公認心理師のカリキュラムは学ぶ量が多いんです。例えば公認心理師として働きたい場合は、すごく勉強が必要なんですよね。大学院への進学も必要ですし、国家試験も合格しないといけません。前提として、知識量が問われます。なので、大学院に進学したいと思っている学生は心理学はもちろんのこと英語や統計もしっかり勉強して欲しいですね。ただ、心理学を学びたての1,2年生は、心理学の知識よりも、心理学を学ぶ楽しさを感じてほしいと思います。

―座学が重要なのですね。学生の反応で嬉しいことはあります?
心理学関係のサークルもそうですけども、主体的に心理学や健康について学びたいっていうのはすごく嬉しいです。基本的に大学の先生って、専門分野について聞かれることがすごく嬉しいんですね。なので、もっと心理学を勉強したいとか、もっと知りたいっていう意欲を見せていただけるのはすごく嬉しいですし、もっと力なりたいなっていうのは感じますね

―素敵ですね!最後に心理学を学ぶ学生にメッセージをお願いします。
今後、生涯の中で自分や自分の近しい人が精神疾患になる確率を考えると、可能性は低くありません。そうしたときに、正しい知識を持って接していただき、自分も含めて、その人が社会復帰できるようにサポートしてもらいたいなと思います。せっかく大学で心理学を学んだんだから誰か困っている人のために役立つように使ってほしいなと心から思います。

―お話しいただき、ありがとうございました!


詳しくはこちら
人間健康学部の教育内容・特色

関連記事

トップに戻る

Instagram LINE You Tube