愛知東邦大学

2026.10.19

心理カウンセラーによる特別講演

 教育学部の総合演習Ⅱが10月7日にあり、ゲストスピーカーとして心理カウンセラーの肥田幸子先生をお招きし、「対人関係について―発達障害を知ることから学ぶ」をテーマに講演していただきました。
 肥田先生に講演をお願いした背景には、対人関係を築く力もまた、大学生活や社会生活を送るうえで重要な力の一つであるという企画者の思いがあります。スウェーデンの大学では、人間関係やコミュニケーションに関する学びが学生支援の一環として位置づけられており、学生が社会の中で他者と関わりながら生きていく力を育むことが重視されています。一方、日本の大学では、専門的知識の修得やキャリア形成に関する支援は充実しているものの、対人関係そのものについて学ぶ機会は必ずしも多くありません。しかし、10代後半から20代にかけては、人間関係に悩みながら他者との関わり方を模索する時期でもあります。そのため、本講演を通して対人関係について理解を深め、自分自身や他者とのより良い関わり方を考える機会となることを目的にしました。
 講演では、発達障害について「(障害が)あるかないかという白黒で判断できるものではなく、傾向や程度の違いとして捉えられるものである」という肥田先生による捉え方が示されました。また、多様な特性をもつ人々が社会を構成していることを踏まえ、「同じ地平に立つ存在」として一人ひとりの個性を理解することの重要性についてお話しいただきました。
 さらに、発達障害への理解を踏まえた具体的な支援のあり方についても紹介していただきました。支援においては、相手の心の安全を守りながら話を聴くことが重要であり、「そんなことも知らないの」「何回も言わせないで」といった言葉は相手の自尊心を傷つけるため避けるべきであることを学びました。また、曖昧な表現ではなく、わかりやすく具体的な指示を行うことの必要性についても理解を深めることができました。
 人間関係に戸惑いを抱える子どもへの支援については、まず本人の気持ちを大切にしながら関わることの重要性について説明していただきました。発達障害のある人の中には、叱られた経験やつらい経験が強く記憶に残りやすいことや、状況を想像して判断することが苦手な場合があることから、支援者側がその特性を理解したうえで関わる必要があることを学びました。
 また、障害を抱えながら働くことの難しさや、スクールカウンセリングの現場における実際の相談事例についてもお話しいただきました。高校生や大学生の相談内容としては対人関係に関する悩みが多く、他者とテンポを合わせることの難しさに加え、学業や進路、就職に対する不安なども抱えていることについて理解を深めました。
 子どもを支えるうえでは家庭環境の影響も大きく、教員や保育士には保護者との信頼関係を築きながら、子どもにとってより良い環境をともに考えていく姿勢が求められるということです。
 講演の最後には、クラス内で一人の女子児童(生徒)が仲間外れにされている事例を取り上げ、もし自分たちがこのクラスの担任であったらどのように対応するかをテーマに、総合演習Ⅱを履修する学生全員で意見交換を行いました。学生たちはさまざまな立場から考えを述べ合い、子どもの気持ちに寄り添った支援のあり方や、学級全体への働きかけについて理解を深める貴重な機会となりました。
 本講演を通して、学生たちは発達障害に関する理解を深めるとともに、多様な個性をもつ人々との関わり方や支援のあり方について学ぶことができました。また、対人関係における困難を個人の問題として捉えるのではなく、多様な特性を理解しながら相互に支え合う視点の重要性についても理解を深めることができました。将来、教員や保育士として子どもたちと関わるうえで必要となる視点や実践的な知識を得ることができた、大変有意義な学びの機会となりました。(教育学部准教授 武寛子)

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