2026.03.19
2025年度学位記授与式 鵜飼学長式辞(全文)
皆さん、ご卒業おめでとうございます。昨夜来の雨、「催花雨」というようですが、その雨に促されるように、平和公園では、梅から桜へと主役が移り変わろうとする佳き日に、愛知東邦大学学位記授与式を挙行できますことを心より嬉しく思います。
本日ここに、経営学部ビジネス学科117名、経営学部国際ビジネス学科36名、人間健康学部人間健康学科102名、そして教育学部子ども発達学科35名、総計290名の皆さんに学士の学位を授与いたしました 。
ご臨席を賜りました東邦学園理事長榊直樹先生をはじめとするご来賓の皆様、教職員一同、そして在学生と共に、皆さんが無事に学位を取得されたことに心よりお祝いを申し上げます。また、今日という日を迎えるまで、物心両面で皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様に対して、本学を代表して厚く御礼申し上げます。卒業生の皆さんも、感謝の気持ちを込め、「ありがとう」と伝えてください 。
困難を乗り越える「しなやかさ」:信頼と個性を礎に
皆さんが本学で過ごした4年間は、単に知識や技能を習得するだけの時間ではありませんでした。愛知東邦大学が掲げる建学の精神「真に信頼される人格の育成」とコンセプトフレーズ「オンリーワンを、一人に、ひとつ。」という学風の中で、自分にしかない輝きを見出し、磨き上げる日々であったはずです。
本学での学びを通じて、皆さんは、自分自身の「オンリーワン」の強みを自覚し、それを社会や他者のためにどう活かすべきかを真摯に考えてきました。実習や演習、課外活動、地域連携活動といった多様な挑戦の場において、皆さんは周囲の人々と対話し、時には壁にぶつかりながらも、一つひとつ「信頼」を積み重ねてきました 。
これから皆さんが踏み出す社会は、予測不能な変化に満ちています。しかし、本学で培った「自分だけの個性(オンリーワン)」と、「他者から寄せられる信頼」という二つの宝物があれば、どのような困難も、しなやかに受け止め、自らの糧に変えていくことができるでしょう。「しなやかさ」とは、単に強いということではありません。それは、自分の弱さや不完全さを認めながらも、自らの個性を信じ、他者との信頼関係を杖として、状況の変化に柔軟に対応できる力のことです。強さと優しさ、そして個性が融合したその「しなやかさ」こそが、皆さんのこれからの人生を支え、未来を切り拓く真の強さとなることを確信しています。
私の専門である工学の視点から未来を展望すると、皆さんが生きていく近未来社会は、かつてないスピードで変貌を遂げようとしています 。AI(人工知能)、ロボット、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった技術は、もはや単なる道具ではなく、私たちの生活様式や価値観、労働の在り方そのものを根本から変容させる「魔法」のような存在になりつつあります。とくに生成AIの出現は、私たちの知的作業の在り方を一変させています。
そこで、そのような社会に歩みを進める皆さんに、本学の3つの学部で学んだそれぞれの専門領域において、AIが社会にどのような影響を及ぼし、変えていくのか? 一方で、そこでは何が人間にしかできないことなのか? ここで、ひとつの指針をお伝えしましょう。
各分野におけるAIの進展と「人間にしかできないこと」
1 経営分野(経営学部)
AIは膨大なデータの分析や業務の最適化、効率的なビジネスモデルの提示において圧倒的な力を発揮します。既に、生成AIは「便利なツール」から自律的にタスクを実行する「エージェントAI」のフェーズに移行しているとも言われています。しかし、経営の母体である人間組織を動かすための「信頼」を積み重ねていくことや、既存の枠組みを超えた「新しい価値の創造」、そして不確実な状況下での「経験に根差した実践的な知恵」による決断は、人間にしかできないことです。
2 からだとこころの健康科学分野(人間健康学部)
さまざまなセンサー、ウェアラブルデバイス、AI診断などにより、身体や動作パターンのデータの可視化と解析、それらを利用した健康管理はより精密になり、ますますその活用の範囲は拡大していくと考えます。しかし、病や老いなどで困難な状況にある人の心に寄り添い、共に歩む中で「生きる力」を育むこと、そして数値化できない「心の機微」を感じ取る「共感力」は、AIには決して代替できない尊いものです 。
3 保育・小学校教育分野(教育学部)
今後、AIの活用によって、子供たち一人ひとりに最適化された学習支援が提供され、効率的な教育環境が整備されていくことでしょう 。しかし、次世代を担う子供たちの無限の可能性を信じ、愛情を持っ
て導く「未来への責任」、そして直接的な触れ合いを通じて豊かな人間性を育む教育の神髄は、皆さんの手にしか委ねられていません。
「人生を動かすのは、皆さんの感度」
私たちの人生は、出会いにふさわしい責任を引き受けるたびに、次なるステージへと進んでいきます。人生に遅すぎるということはありません。いつだって「今」が始まりの時です。
作家のJohn Steinbeckは「人が旅をするのではない。旅が人を連れて行くのです。」という言葉を残しています。新しい場所や人との出会いが、自分自身を成長させるということを示唆していると思います。日常に潜む出会いや偶然を、ただの出来事で終わらせない。心のアンテナを研ぎ澄ませ、「気づきの
感度」を最大に高めること。退屈に見える日常も、好奇心というフィルターを通せば、未来を拓く宝庫に変わります。あなたの探究心が、通り過ぎるはずだったチャンスを「運命」へと変えていくのです。自ら鍵を握り、輝かしい未来を切り拓いていってください。
愛知東邦大学は、皆さんが4年間を過ごしただけの場所ではありません。いつでも戻ってこられる場所であり、皆さんの挑戦をこれからも力強く支援し続ける場所です。皆さんのこれからの歩みが、希望に満ち、健やかで、そして幸多きものであることを心より祈念いたします。
本日は、誠におめでとうございます。
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