2022.04.02
2022年度入学式 鵜飼裕之学長式辞
皆さん、愛知東邦大学にご入学おめでとうございます。本日、ここに、経営学部173名、人間健康学部124名、教育学部45名、ならびに経営学部3年次編入学生4名、総計346名の入学を許可いたしました。ご臨席の東邦学園理事長、監事ならびに列席の副学長、部局長をはじめとする教職員一同とともに、皆さんのご入学を心よりお祝いしたいと思います。中国からリモートで入学式に参加している留学生の皆さん、“恭喜你被录取 Gōngxǐ nǐ bèi lùqǔ”愛知東邦大学にようこそ!一日も早くお会いできることを願っています。
もとより、皆さんが、今日晴れて入学式を迎えることができたのは、ご家族や恩師、友人たちの温かい支えがあったからに他なりません。ご家族ならびに関係の皆さまに大学を代表して心よりお祝いを申し上げます。
さて、皆さんは高校生時代の多くを新型コロナウイルスのパンデミックの中で過ごされました。非常事態宣言下での休校措置やクラスター発生による学級閉鎖などによって授業が遅れたり、慣れないリモート授業によって自宅学習を余儀なくされたり、また、部活動などが思うようにできないなど、学校生活での制約に加えて普段の生活においても自粛を強いられる。そのような環境の中で、皆さんは人生にとって一番多感な時期を過ごされました。三年生になられてからは、新型コロナウイルスデルタ株とオミクロン株が相次いでまん延する中で、将来に対する不安な気持ちを抱きながら、大学受験に備えられたのではないかと思います。しかし、そのような苦境の中でも、皆さん、本当に、よく頑張りました。息苦しさや辛い思いを抱えながらも、日々弛むことなく勉学に励み、晴れて大学生としての一歩を踏み出されましたことに対して、教職員を代表して心より敬意を表します。
入学式は、皆さんにとっては、一段高みにステップアップする希望溢れる晴れやかな舞台です。大学にとっても、関係者全員そろって新たな仲間を歓迎する祝祭の場です。しかし、未だ感染者数が5万人を超えるなど感染リスクが極めて高い状況にあることに鑑み、入学生全員が揃い、ご家族の方々、在学生、そして大学に関係するご来賓と共に、入学を祝うことができないことは大変残念です。皆さんをはじめ関係者の健康と安全を最優先として、入学式を簡素化、縮小せざるを得なかったことをご理解いただきたく思います。
失敗もかけがえのない経験
さて、入学式には桜がよく似合います。平和公園の桜も、皆さんを祝福するかのように今が盛りと咲き誇っています。そこで、桜にちなんだ俳句をひとつご紹介しましょう。「人の行く 裏に道あり 花の山」。俗説では千利休が読んだとも言われていますが、株式投資の世界では有名な格言として使われています。皆と同じ道を選ぶより、皆が行かない裏道を行く方が満開の花に出会うチャンスがある、つまり得られるものが多いという意味です。これまでの成功体験の延長線上を辿っていく、あるいは皆が進む道を行く方が安心感、安定感がある。しかし、リスクをとって人とは異なる道を選ぶところには大きな儲けが待っている、という相場に臨む人々の心理を巧みに映した俳句です。昨今流行りの「破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)」、すなわち、従来の価値観とは異なる全く新しい価値基準の下での技術革新、例えれば「ガラ携」に対する「スマホ」のようなものですが、それに通じる考え方かもしれません。
人生の山や谷が株の乱高下に例えられるように、皆さんがこれから歩む人生には、様々な道、岐路が待ち受けています。どの道を選ぶのか、リスクをとるかとらないかは皆さん自身が決めることです。学生時代は、人生の中でも数少ない、思うままに、やりたいことが存分にできる貴重な時間です。失敗を恐れず、トライ&エラーを繰り返してください。どんな道を選んでも、どんなに失敗しても、そこでの経験は皆さんにとってかけがえのないものとなるでしょう。そして、きっとその先には、皆さんがこれまで見たことのない満開の桜や素晴らしい景色が待っています。それを信じて進んで行ってください。
世界は、今、デジタル化、ソーシャル化、グローバル化の大きなうねりが押し寄せ、新たな時代の到来を予感しつつ大きな転換点を迎えています。さらに、わたしたちは、2年間にわたる新型コロナウイルス感染のパンディックを経験することで、過去の経験値を活かすことが難しい予測不能な時代に突入しました。また、連日メディアで報道されているウクライナへのロシア軍侵攻によって起きた地域戦争は、予想を遥かに超えた世界的な規模でその影響は広がり、痛ましい戦争被害を私たちは目の当たりにしています。こうした目まぐるしい世界の変化は、私たちの予想をはるかに超えるスピードと規模で起きています。そうした世界に、そして時代に皆さんは成人としての第一歩を踏み出すことになります。
実は、先ほどの句には下の句があるそうです。「いずれを行くも 散らぬ間に行け」。うかうかしていると、花は散ってしまう、勝機を逃しますよ、という警句です。でも、皆さんは、時代の波に急かされて先を急ぐ必要はありません。これからの4年間じっくりと時間をかけて、自分の進む道を探してください。それが大学生の特権です。
現実世界から得る実感は大切
これから皆さんが大学で学ぶのは、単に専門の知識と技能だけではありません。専門のみならず、日本の歴史と風土、文化、社会の仕組み、そして世界を知るために幅広い教養を身に着け、自らの人生観、世界観を築く場所と機会を与えてくれるのが大学です。愛知東邦大学では、皆さんがこうした教養を自然に身につけられるよう、「自分を知り、自分で考え、自分の世界を見つける」ための総合教養科目を用意しています。また、課外活動やグループ活動を通した実体験からも、今の皆さんの感性だからこそ得られるものが沢山あります。こうした現実世界から得る「実感」は人間にとって大切なものです。情報化社会の中で育った皆さんなら、知識と情報の収集については、持ち前の好奇心と粘り強さを発揮して、難なく乗り越えられると思います。しかし、個としてのオリジナリティ、他者とのコミュニケーション、コラボレーション、そうした人間力の磨きについてはいかがでしょうか?例えば、ダ・ヴィンチの描いたモナ・リザ。ネットで鑑賞するのとルーブル博物館で鑑賞するのとでは全く違った印象を受けるはずです。その時の部屋の雰囲気、気分など、現実で得る実感により情報は厚みを増し、記憶に刻まれて「心」の奥に染込んでいきます。それが個性を育み、人間性に深みを与えます。また、互いに触発し合い、切磋琢磨し、共感しながら他者と繋がることで「心」はどんどん豊かになっていきます。さらに、グローバル化する社会では、自らの考えを国際社会でしっかりと主張できる論理的な思考力、発信力、実行力をもった若者が求められています。大学時代の海外留学経験は世界に通用するグローバルな感性を養う絶好の機会です。
愛知東邦大学は、学園創立100周年を契機として、次の100年において地域における高等教育の中核を担う中堅大学として発展することを期し、長期ビジョン“AICHI-TOHO NEXT CHALLAEGE 2030”を掲げました。
「東邦学園創設の建学の精神を受け継ぎ、きらりと光る独創性を如何なく発揮し、人材育成と学術で地域社会の活力を生む創発大学として新たな時代を切り拓いていく。そして、個性を磨き、地域・世界へと繋がる共感力を育む人材育成拠点、学生と教職員が一体となって、個々の能力を磨き、独創性を発揮しながら、互いに共感して繋がる創造性豊かなキャンパス」をめざします。
愛知東邦大学は、皆さんの若いエネルギーと可能性を最大限に活かせる教育環境を整えています。自立した一人の人間として力強く生き、グローバルステージをめざす皆さんの意欲を、愛知東邦大学は全力で支援いたします。そのための環境作り、整備を惜しみません。予測不可能な時代を前にして、皆さんは、自ら進む道を切り拓いていかなくてはなりません。その道標となるのが諸先生方、先輩方の声です。柔軟に耳を傾けて下さい。険しい道を果敢に進んでいって下さい。その先にある扉を開くのは、ここにいる皆さんです!
学生生活を思う存分楽しみ、学問・研究に気概を持って挑んで下さい。
2022年4月2日
愛知東邦大学長 鵜飼裕之