2016.08.17
東邦、ミラクルの夏終わる
第98回全国高校野球選手権大会で3回戦に進出した東邦高校は8月17日、第1試合で10年連続出場の聖光学院(福島)と対戦、2-5で敗れ、準々決勝(ベスト8)進出はなりませんでした。
初回に1点を許した東邦は、2回裏、藤嶋のチーム初ヒットから連打と犠牲フライで同点に追い付きました。しかし、5回に1点勝ち越した聖光学院は、6回にも無死一、三塁から2本のタイムリーで2点を追加。7回にも1点を加えました。2試合で39安打を放ってきた東邦打線でしたが聖光学院の鈴木に抑え込まれ、8回、藤嶋の適時二塁打で1点を返して反撃。2回戦で劇的な大逆転ドラマを演じた東邦だけに、甲子園球場には2回戦の時と同様、タオルを振り回しての東邦への声援が一段と高まりましたが反撃はここまで。2度目のミラクルは起きませんでした。
「打ってはいけない球に手を出してしまった」。森田泰弘監督は、攻め切れなかった原因を振り返りながらも、「2回戦では2度と見ることがないだろう大逆転を演じてくれた」と選手たちの健闘をたたえました。
一塁側アルプススタンドは、午前8時開始に間に合うよう、午前3時半に名古屋市名東区の東邦高校を出発した生徒や父母たちのほか、栄のテレビ塔下を午前0時すぎ発の応援バスや、マイカーなどで乗り込んだファンたちで埋まりました。愛知東邦大学関係者たちも2回戦同様、熱い声援を送りました。
試合を終え、生徒たちと一緒に帰りのバスに向かう佐々木泰裕校長は、「選手たちのおかげで、全国舞台に3回も登場させてもらう貴重な体験ができました。選手たちに本当に感謝です」と選手たちの健闘をたたえていました。
甲子園球場を後にする東邦高校の控え選手やチアチームの応援団には、高校野球ファンたちから次々に、「感動をありがとう」「頑張ったね」などの声が上がりました。「東邦のおかげで今年は素晴らしい夏休みが楽しめました」と、満足そうに名古屋に帰るバスに乗り込む応援バスツアー参加者もいました。
高校野球ファンとしても知られる作詞家の阿久悠さん(故人)は、毎年のように、夏の甲子園大会をテレビで観戦しながら、『甲子園の詩~敗れざる君たちへ~』(2013年、幻戯書房)という本を残しました。この中には、1992(平成4)年8月21日に行われた第74回大会3回戦、東邦対県岐阜商業戦も収められています。
1回戦、2回戦をサヨナラという<ミラクル>で勝った県岐商は、3回戦で東邦に0―1で敗れました。「敗れざる君たち」は県岐商の選手たちのことですが、その一節を、この日、やはり3回戦で敗れた東邦に置きて換えたとしても、阿久さんの球児たちを称える熱い思いは同じだと思いました。
ミラクルは、やれば出来る人たちがやって出来ただけのことで、裏付けのない劇的展開ではないのだ。
もしかしたら、日々の練習の中で、培ってきた自信に比べたら、奇跡でさえ不足かもしれない。まさしく、やれば出来る人たちがやって出来ただけのことなのだ。