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2021年度入学式 鵜飼裕之学長式辞

2021/4/5

 愛知東邦大学の2021年度入学式が4月2日に行われました。式典は教育学部、人間健康学部、経営学部の順に学部ごとに執り行われ、4月1日付で就任した鵜飼裕之学長が、それぞれの式典で式辞を述べました。3学部での式辞をまとめた全文です。

 

 皆さん、愛知東邦大学にご入学おめでとうございます。本日、ここに、経営学部148名、人間健康学部136名、教育学部68名、ならびに編入学生8名、総計360名の入学を許可いたしました。ご臨席の東邦学園理事長、理事、監事ならびに列席の副学長、部局長をはじめとする教職員一同とともに、皆さんのご入学をお祝いしたいと思います。中国からリモートで入学式に参加している留学生の皆さん、“恭喜你被录取 Gōngxǐ nǐ bèi lùqǔ”愛知東邦大学にようこそ!皆さんは、コロナ禍の中での一年間、学校閉鎖、ステイホームなど不自由な生活を強いられる中、将来に対する不安な気持ちを抱きながら、受験に備えられたのではないかと思います。しかし、苦境にあっても日々弛むことなく勉学に励み、晴れて大学生への一歩を踏み出されました。その努力に対して心より敬意を表します。

 もとより、皆さんが、今日、入学式を迎えることができたのは、ご家族の温かい支えがあったからに他なりません。ご家族ならびに関係の皆様に心よりお祝いを申し上げます。

入学式は、皆さんにとっては、一歩前進、ステップアップする、希望溢れる晴れやかな舞台です。大学にとっても、新たな仲間を歓迎する祝祭の場です。しかし、今年は、入学生全員揃って、ご家族、在学生、そして大学に関係するご来賓が一堂に会して、皆さんの入学をお祝いすることができないことが大変残念です。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ、皆さんをはじめ関係者の健康と安全を最優先として、入学式を縮小せざるを得なかったことをご理解いただきたく思います。

 昨年1月23日、中国武漢で始まったロックダウンから既に一年以上経ちましたが、新型コロナウイルスは、依然として世界中で猛威を振い、感染者、死亡者の数は日々増しています。わが国でもたくさんの方々が犠牲となられました。ここに、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、治療を続けておられる方々の一日も早いご快癒を心よりお祈り申し上げます。

 新型コロナウイルスのパンデミックは、高度に科学技術が発達し、グローバル化した産業社会において人類が経験するはじめての世界的危機です。感染の拡大を抑えるため、国や地域を跨いだ人の往来は制限され、人々の日常生活は緊急事態の制約下で逼塞しています。この間、産業社会としての経済的なダメージは計り知れず、今後ますますその影響が懸念されるところです。一条の光明として、ワクチンの普及が始まっていますが、一方で、ウイルスの変異株も種々発見され、謂わば、人類の知恵とウイルスの進化との競争の様を呈しています。まるで、旧約聖書のバベルの塔で描かれたように、世界は分断と混乱の中にありますが、しかし、このようなときこそ、世界はひとつになり、長い歴史の中で蓄積してきた人類の英知と最新の科学技術を集結して解決方法を見出し、一日も早く世界がふたたび正常化することを切に願っています。

 さて、愛知東邦大学は、今年で創立20年を迎えるまだ若い大学です。しかし、その前身である東邦学園短期大学設立からは56年、さらに、東邦高等学校の前身である東邦商業学校の創基は98年前、1923年にまで遡り、東邦学園は、大変歴史と伝統ある学校です。

 創立当時の100年前を少し振り返ってみましょう。東邦学園の創設者である下出民義先生は、明治から昭和初期にかけて中部圏をはじめわが国の産業界において活躍された実業家にして政治家、教育者です。下出先生が名古屋熱田の地に「愛知石炭商会」を開業され、起業家としてスタートを切られた1889年は、中部圏初の電気事業者である名古屋電灯(中部電力の前身)が開業した年でもあります。下出先生は、後に電力王と呼ばれた福澤桃介とともに名古屋電灯の経営に参画、副社長を務めておられますが、下出先生が活躍された時代は、まさに石炭と水力を一次エネルギー源とする電気エネルギーの誕生と大量生産の時代を迎えた第二次産業革命と呼ばれた産業社会の一大転換期でした。

 そして同時に、下出先生が木曽川水系の電源開発や電力の合金製造への活用に力を注いでおられた1918年頃、世界はスペインインフルエンザのパンデミックに見舞われていました。その犠牲者は、感染者が5億人以上、死者は5000万人以上と言われ、わが国でも1918年から20年にかけて2380万人が感染、約39万人が犠牲となるなど猛威を振るっていました。その様な時代に東邦学園は誕生しました。

 それから100年後の現在、世界はICTの急速な進展によってグローバル化、デジタル化、ソーシャル化が加速し、私たちの生活様式は大きく変わろうとしています。自動車産業において100年に一度の大変革期と言われるように、産業社会は第四次産業革命と言われる一大転換点を迎えています。そして同時にまた、私たちは、新型コロナウイルスのパンデミックのただ中にあります。この様なときに私たちは生きています。

 100年前、時代の転換点にあって、下出民義先生が、「現代社会の求むる着実なる実業青年を養成し以て社会的報恩の一端に資する希望の下に創立」するという強い意思でめざされた人材育成ビジョンが「真に信頼して事を任せうる人格の育成」です。その志を受けて100年後、再び社会が大きく変わる時代の転換点にあり、さらには予測が困難な時代を迎えている今だからこそ、東邦学園の建学の精神を受け継ぎ、中部経済圏において地域社会に貢献し、グローバル社会で活躍する人材を育成することが愛知東邦大学の使命であると考えています。

 愛知東邦大学は、学園創立100周年を契機に、次の100年において地域における高等教育の中核を担う中堅大学として発展することを期し、長期ビジョン“AICHI-TOHO NEXT CHALLAEGE 2030”を掲げました。すなわち、

 「建学の精神を受け継ぎ、きらりと光る独創性を如何なく発揮し、人材育成と学術で地域社会の活力を生む創発大学として新たな時代を切り拓き、そして、個性を磨き、地域・世界へと繋がる共感力を育む人材育成拠点を実現します。」

 「学生と教職員が一体となり、それぞれ自らの能力を磨き、独創性を発揮し、そして、互いに共感して繋がる創造性豊かなキャンパス」。それが、愛知東邦大学がめざす「創発大学」です。

 経営学部に入学する皆さんは、これからビジネスに関する知識や技能を習得し、将来は産業界で活躍することをめざしていることと思います。その時、皆さんの心に留めておいていただきたいことが二つあります。

 一つ目は、皆さんには、ICTツールというハードウェアを身にまとい、ソフトウェアを使いこなす技量を養って頂きたい、ということです。新型コロナウイルス感染防止のため、今年度の授業は対面と遠隔を併用して実施することになりますが、皆さんの健康と安全を最優先とした措置である点をご理解下さい。また、今年の入学生からPCの必携をお願いしています。皆さんには、それを有効に用いて授業に臨むとともに、キャンパス生活でも大いに活用して充実したキャンパスライフを過ごして頂きたいと思います。新型コロナウイルス感染拡大を契機に、世界では一気にデジタル化が加速しています。これからは、わが国でもテレワークが広がり、新たな働き方が浸透して行くでしょう。皆さんが慣れ親しんでいるスマホやタブレットは、確かに使い勝手が良いICTツールですが、基本的にアプリ指向型ツールであり、例えば、文書やプレゼン資料を作成したり、データを整理・分析したり、プログラム処理するような創造的な作業には向いていません。将来PCにとって代わるツールが開発されるかもしれませんが、暫くはPCをベースとした創造的な仕事が中心となります。愛知東邦大学はPCを開いた場所が皆さんのキャンパスとなる、そのような大学を目指しています。大学時代に皆さんの武器としてしっかりと身にまとい、使いこなせるようにしてください。

 二つ目はコミュニケーションについてです。昨今、企業が要望する人材像の一つに、「コミュニケーション力」があります。リアル、バーチャルの様々なコミュニケーション手段によって人とつながり、信頼関係を築き、チームとして働くことができる、端的に言えば、人の話を理解し、自分の考えを伝え、そして、人の気持ちを汲み取ることです。それは、いわば「外とのコミュニケーション」と呼びことができ、皆さんの人間性を豊かにします。一方、もう一つ大切なコミュニケーションがあります。それは、自分との対話、自分と自分が考えている理想の自分との間の問答、いわば、「内とのコミュニケーション」と呼ぶものです。時には、スマホの電源を切り、ひとりきりとなり、自分と対話する時間をもつことも必要です。本を読むことも、対話の助けとなります。それは、皆さんの人間性に深みを与える対話となるはずです。「外とのコミュニケーションと内とのコミュニケーション」。それが、ウィズコロナの時代を経験した私たちに相応しいコミュニケーションの在り方だと思います。

人間健康学部に入学する皆さんは、これから人のこころとからだの健康を科学する専門的な知識と実践的な技能を身につけるために勉強していきます。将来は、保健体育の教員、スポーツトレーナーや指導者、社会福祉や健康管理、救急救命など人の健康や福祉に関わる仕事をめざされることでしょう。

 私は、長年、制御工学の分野で教育研究に携わってきましたが、精力的に取り組んだ研究テーマの一つにリハビリテーションシステムの開発研究があります。脳卒中などによる麻痺や高齢化によって運動機能が低下した方々が自主的にリハビリ訓練するのを支援するロボットシステムの開発です。ロボットという概念は人間の身体的な動作を模倣することから誕生しましたが、その後、ノーバート・ウィーナーの提唱したサイバネティクスの影響もあり、人間の身体運動を力学的、機械論的に捉えることでロボットはより人間に近い存在にまで進化してきました。これは、あたかも人間を機械のように見立てる考え方に基づいています。私たちも、リハビリ支援ロボットにそれを応用し、当初は、如何に機械論的に効率よく、回復効果が得られるような支援ロボットをつくることをめざしていました。しかし、ある時、簡単な道具を使って、励まし励まし訓練している療法士の姿を見たとき、リハビリで大切なのは、回復する意欲、再び歩きたい、元のように手足を動かしたいという患者の気持ちを引き出すことであると教えられました。言い換えれば、身体機能の回復にはこころに届き、気持ちを動かす支援が大切だということです。それはロボット=機械にはできない、こころを持った人間にしかできないことです。

 科学技術の進化は私たちの創造を越えて加速しています。すでに、高齢者を対象とした動物型癒しロボットも実用化されていますが、近い将来、ロボットが人間のように振舞ってリハビリする患者を励ましているかもしれません。しかし、こころを備えているのは人間だけです。たとえ、AI、ロボットがどんなに進化しても、汎用人工知能が人間を超えるというシンギュラリティを迎えても、皆さんには、ひとのこころを健康にし、幸せにするヒューマンケア・プロフェッショナルになって頂きたいと思います。

 教育学部に入学する皆さんは、これから、こどもの発達過程を理解した保育士・教員になるための知識と実践的な能力を身につけ、保育士資格や教員免許をめざして4年間勉強をすることになります。将来はこどもたちから「先生」と呼ばれるのでしょうね。

 私も、大学で教員を務めて40年になります。皆さんからは「先生」と呼ばれていますが、でも、資格も免許も持ってはいません。教師や医師、弁護士、会計士、建築士など世の中で「先生」と呼ばれている人たちの中で、国家資格や免許を持っていないのは大学教員と政治家ぐらいだけかも知れません。

 では、資格や免許とは何でしょう?免許も持たずに教えている私が言うのはおこがましいですが、資格・免許は一種のフィルタのような役割を果たしているのではないかと思います。資格や免許を得るために、職業に固有の専門的知識、技能、場合によっては実務経験を身につける過程でフィルタにかけ、さらに、試験というフィルタによって選別する。フィルタの精度により厳しかったり易かったりしますが、何層ものフィルタによって選別していくキャリア形成機能が資格・免許制度であると思います。では、なぜ資格が必要なのか?それは、社会的な信用度を担保し、職業的な地位を保証するために必要な仕組みだからです。信頼があるからこそ、私たちは子供を安心して託すことができるのです。「先生」と呼ばれることの意味が、社会の信頼や付託を受けているからだということを忘れないで頂きたいと思います。しかし、もっと大切なのは、子どもたちと信頼で繋がることです。それが真に「先生」の意味ではないかと思います。

 AIやデータサイエンスなどICTの急速な発展はますます加速し、さらにはウイルスとの共存社会の到来によって、私たちの生活様態は大きく変わっていうことが想定され、ひいては子どもたちの生活環境も大きく変わっていくでしょう。教育環境も、GIGAスクール構想にあるようにデジタル化が進んでいきます。皆さんは、そのような環境で子供と向き合うことになります。そのとき、どのように子どもたちと共感し、信頼で繋がることができるのか?その答えを見つけるのはあなたたち、未来の「先生」です。

 愛知東邦大学は、皆さんの若いエネルギーと可能性を最大限に活かせる教育環境を整えています。自立した一人の人間として力強く生き、グローバルステージをめざす皆さんの意欲を、愛知東邦大学は全力で支援いたします。そのための環境作り、整備を惜しみません。予測不可能な時代を前にして、皆さんは、自ら進む道を自分の力で切り拓いていかなくてはなりません。その道標となるのが諸先生方、先輩方の声です。柔軟に耳を傾けて下さい。険しい道を果敢に進んでいって下さい。その先にある扉を開くのは、ここにいる皆さんです!

 愛知東邦大学は、教育研究環境の充実と改善をはかっていくことを強く約束し、私の式辞といたします。

                        

2021年4月2日    
                      愛知東邦大学長 鵜飼裕之