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 「窮屈な待つ時間」には 十分意味がある

 日々感染への不安を抱きながら、「こもること」に気持ちは塞ぎがちでしょう。そうした皆さん、大学は前期授業を終えました。新型コロナウイルスの感染拡大によって、皆さんもご家族も、教職員にとっても、手探りで試行錯誤の半年間でした。
 皆さんに問います。「コロナ禍」の下で、これまでの半年間は実に「窮屈で退屈な時間」だったと推察します。では、「無駄な時間」と言えますか? 私は、無益でも無駄でもなく、皆さんはもちろん、多くの人々に対して十分な意味があり、貢献できた時間だったと理解して頂きたいのです。

 理由の第一は、「感染力の強さと急拡大」にカギがあります。致死率が新型コロナウイルスよりはるかに高いコレラは、かつてインドの風土病でした。19世紀から20世紀にかけて流行したとき、世界中に拡がるまでに20年かかったそうです。ところが、新型コロナは昨年末からの2カ月半で、110余の国・地域に拡がりました。なぜか――。
 「ヒトが媒介し、新たなヒトにうつす」病気であり、人々が忙しく行き交う時代に変わったからです。人が動かず、感染防止を徹底すれば、感染は収まります。皆さんの「こもり」は有益であり、他人への貢献も果たしたことを、理解できるでしょう。

不条理な「ペスト」ではなく 制御可能なコロナ

 理由の第二は、「不幸な中にも、幸いにして」、新型コロナに動物による媒介が今のところほとんどないようだ、という側面です。
 感染拡大と共に再びベストセラーとなったアルベール・カミュの『ペスト』は、1940年代のフランスの植民地・アルジェリアのオラン市にペストが襲い、約10か月間、多くの人々が亡くなっていく恐怖を描いた小説です。実話に基づいてはいないのに、その想像力と先見性は、73年後のいまをずばり予告しています。「初めは真実を市民に伝えない役所」「都市の封鎖」「無垢な少年、献身的に尽くした人にも襲う死」。一方で「ここの市民たちは一生懸命働くが、それはつねに金を儲けるためである。」という舞台設定には、「感染防止と経済活動」を同時並行で進める現在の状況とも通じるものを感じます。
 「なぜ救えなかったのか」と、突然の悔しい別れも共通しています。けれども、新型コロナウイルスには、絶望的な「ペスト」とは大きく異なる「望み」があります。ペストを媒介するのは動き回るネズミですが、新型コロナの媒介者はヒトだからです。理性を備えた人であるからです。カミュはペストを通じて人を不条理さに向き合わせました。でも今の私たちは、新型コロナに対して理性ある過ごし方をすれば、不条理な死を最小限に抑え込める科学的な方法と裏付けを知っています。

 最後の理由は、そう遠くないうちに「終息のとき」が来そうだという見通しです。最先端の科学研究の努力によって治療薬が作られ、ワクチンも来年には大量生産されると伝えられています。私たちは出口を見通せなければ、大きな不安に駆られます。逆に出口の明りが見えれば、自制し、辛抱すべき時間も落ち着けるはずです。

後期も不自由な遠隔方式があり得ます

 ほぼ遠隔方式で進めた前期の授業には、至らないことが多々ありました。特別な事情とはいえ、ご不便をおかけしたことを、申し訳なく思います。
 後期は対面授業を主にする方針ですが、大人数の講義は分割し、場合によっては遠隔方式で行います。さらに非常事態宣言が発せられたり、本学で感染者が発生したりすれば、即座に対面方式から切り替えます。学生と教職員双方にとって、感染を抑えるには最善の措置だと考えるからです。
 ですから、日々の行動に「この程度なら」と気を緩めたりしないでください。医療従事者の、命懸けの努力を目に浮かべて下さい。まして、大多数の「待つ努力」を台無しにするような羽目外しの振舞いは、決して容認できません。
 求められるのは冷静な「時間稼ぎ」です。終息の時まで、窮屈でも待ちましょう。意味のある時間なのですから。

2020年8月11日
愛知東邦大学
学長  榊 直樹